昭和二十八年 夏の事件


わたくしは浅草に行くと必ずロック座の前を通り、花やしきに向かう。そそくさと入場券を購入すると、それ真っ先に駆け出し、当時設置されて間もないローラーコースターへと向かう。他の遊園地(荒川遊園、多摩川園、豊島園)のそれと違うのは、民家の窓際ぎりぎりのところを猛スピードで通り抜けるような仕掛けがあるところだろう。もうそれは怖い怖い。
豆汽車、馬車、メリーゴーランド、紙芝居で遊んだら、花やしきを出て、スマートボールへ。これはパチンコとよく似ているのだが、筐体は垂直ではなくほぼ水平で、玉はパチンコ玉の10倍以上大きい物を使用する。このため、玉の勢いはそれほどなく、ゴロ〜ン・・・ゴロゴロとゆっくりと転がる。ひとしきり、遊んでいるとだんだん玉がたまり始める。これをどうするかと言うと、ニッキ水や風船などの景品と交換できるのである。
夕暮れが近くなると仲見世で、ニッキ水を飲み、下駄をカタカタさせながら帰るのであった。