Zombie


先週末にゾンビが大量発生した。ゾンビ狩りが今日も続けられている。もう安心して生活などしていられない。ゾンビの弱点は未だ解明されておらず、1匹始末するのにも大変な時間と労力を費やさなければならなかった。それには長い直線の道路と車が必要であった。

ゾンビは異様なスピードで走ることができた。それを利用して、車を追いかけさせ、十分なスピードが出たところをライフルで撃ち抜くのである。

わたしはゾンビ狩りが行われている川向こうの高台にある道を歩いていた。身の危険を感じたため、身を隠すことにした。少し先を行ったところに、木造 1 階建ての喫茶店らしき建物があった。ドアを少し押す。鍵はかかっていない。誰かいますか?と声をかけたが返事はなかった。どうやらここの主人は既に逃げ出してしまったようだ。

椅子に腰掛け、窓に顔を向ける。ライフルの音が響く。まったく嫌な世の中になったものだ。

ズドーンという音はなかなかおさまらない。なにかしくじったのか。ここは近すぎて危険だ。少しの間、ここにじっとして、音が静まったら逃げだそう。

どれくらいの時間が経ったのだろうか。コーヒーを飲みながら外の様子をうかがっていた。

足音だ。誰かこちらに向かってくる。ザクザクと足音は大きくなる。誰だろうとドアに近づいた。ズドーンという銃声。ドアの真ん中に大きな穴が空いた。

わたしは料亭にいる。某国のマーク大佐とはかれこれ 20 年の付き合いになる。今日は友との再会でうまい酒が飲めそうだ。話題は尽きそうもない。

「マーク久しぶりじゃないか!」

わたしは大声を上げていた。

話はまったく尽きることはなかったが、時間の都合もあり、このあたりでお別れをすることになった。マークは、迷路のような廊下を難なく歩いていき出口まで見送ってくれた。途中の個室に入るときに、

「この先が玄関になっているよ。君の靴もそこにある。駅はすぐそばだから」

と言って別れた。

わたしは廊下のすぐ先の玄関に出た。靴を探してみたが見あたらない。誰かが間違えて出たのだろうか。

そうしているうちに、番頭さんが出てきた。

「お客さん、ここは玄関が 2 カ所ありますので、もう一つの玄関ではないですか」

なるほど、そういうことか。そうかもしれないな。それなら合点がいく。

私は来た廊下を引き返した。途中、廊下をすれ違う兵士の会話が耳に飛び込む。

「定刻になったらあの国の兵士を・・・」

そこから先は聞き取れなかった。何か気になるが、もう一つの玄関に向かう。

途中でマークに出会った。大変な形相をして、叫んだ。

「友よ早く逃げるんだ!。力になれなくて申し訳ない!走れ!走るんだ!」

先ほど、廊下ですれ違った兵士の言葉が頭に浮かんだ。なるほど、そう言うことだったのか。とにかく、このまま廊下を全力で走ることにした。つかまったら殺される。

しかし、廊下の兵士は私をとらえようとしない。まあいいさ、このまま走り続けるしかない。

気が付くと中庭に立っていた。横一列に人が並んでいる。なんなんだこれは。

前に看護婦が立ち、粉ミルクを燃やし始めた。焦げた粉ミルクを水でといて、こう叫んだ。

「わたしたちは、赤ちゃんに、こんな焦げたミルクしかあげられないのよ!」

燃やさなければいいのにと思った。